はじめに
こんにちは、taiです。
臨床において、よく高齢者の円背姿勢になっている方を担当することは多いかと思います。また、一括りに円背といっても脊柱のアライメントがどのような関係性になっているのかを知ることをは運動療法を考えていく上で重要かと思います。
そこで本日は、骨盤と胸郭の関係性について、武田らの「骨盤、脊柱アラインメントが胸郭可動性と呼吸機能に及ぼす影響」より私見も踏まえて述べていきたいと思います。
私見や解釈の違いも生じる可能性がある為、気になる方は、是非とも原著をご確認ください。
内容
目的:胸郭可動性と呼吸機能に影響を与えている要因を胸椎弯曲角度、腰椎弯曲角度、骨盤後傾角度の 3 つに分け、影響を及ぼす程度を明らかにすること
対象:健常成人男性 14 名
方法:骨盤前後傾中間位、骨盤 10° 後傾位、骨盤 30° 後傾位、骨盤 50° 後傾位の端座位で、呼吸機能、胸郭拡張差、胸腰椎弯曲角度を測定した。
※呼吸機能検査はスパイロメータを使用し肺活量、%肺活量、予備吸気量、努力性肺活量、%努力性肺活量を測定。
各測定肢位間での呼吸機能と胸郭拡張差の比較と骨盤後傾角度の違いによる胸椎弯曲角度、腰椎弯曲角度の変化を分析した。
結果:
・骨盤前後傾中間位と比較し、各骨盤後傾位では 呼吸機能検査や胸郭拡張差で有意に低値を示した。
・胸椎後弯角度は骨盤前後傾中間位と比較し 50° 後傾位で有意に高値を示し、腰椎後弯角度は骨盤前後傾中間位と比較し骨盤 10°、30°、50° 後傾位で有意に高値を示した。
・ 呼吸機能では関連の大きい順に、骨盤後傾角度、腰椎後弯角度、胸椎後弯角度となり、同様に胸郭拡張差では骨盤後傾角度、胸椎後弯角度、腰椎後弯角度となった。
⇒胸郭可動性と呼吸機能は骨盤後傾角度の程度に最も影響され、次いで腰椎後弯角度、胸椎後弯角度が影響した。
考察:
・円背姿勢が胸郭可動性と呼吸機能に及ぼす影響について
胸椎の後弯が増大し胸郭が後方へ偏位した姿勢になると、胸郭の前後径が狭くなり横隔膜が弛緩した状態になる。
横隔膜の弛緩は筋の長さ─張力曲線の関係より発生張力が減少し、横隔膜の呼吸筋作用が低下する。
胸椎後弯が増加すると肋椎関節は前方回旋位で固定されることになり、肋骨の後方回旋運動は制限され、吸気時に生じる肋骨の挙上運動が困難となる。
・胸郭可動性と呼吸機能には骨盤後傾角度、腰椎後弯角度の影響が大きい結果について
腰椎後弯角度の増加の影響として、脊柱後弯の増大により腹筋群の筋長が短縮し、筋の長さ - 張力関係から収縮効率が低下する。
円背群では腹筋群の収縮が弱まり、横隔膜を押し上げられず、腹部を縮小する動きが減少し、呼気筋としての腹筋群の張力を低下させる。
また、円背姿勢では胸腰椎後弯に伴い、代償的に頸椎前弯の増加が起こる。頸椎前弯角度増加の影響としては、姿勢保持のために胸鎖乳突筋、僧帽筋、斜角筋の過活動を引き起こし、吸気筋としての機能低下、呼気時の肋骨下制を制限している。
同様に骨盤後傾角度の増加は後方重心となり姿勢保持に腹筋群や頸部伸筋群を使う必要があるため、最も胸郭可動性と呼吸機能に影響を及ぼす要因となった可能性あり。
・骨盤後傾角度と胸椎弯曲角度、腰椎弯曲角度の関係について
骨盤後傾角度の増加に伴い最初は腰椎後弯角度が増加するが、骨盤 30° 後傾位から骨盤50° 後傾位にかけて胸椎後弯角度の増加の方が著明となっていることから、胸腰椎の土台となる骨盤の肢位が脊柱に与える影響が強く、それに伴い胸郭可動性と呼吸機能の低下を引き起こしている可能性あり。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は、骨盤と胸郭、呼吸の関係性についてまとめてみました。
今回の論文より円背姿勢では骨盤後傾角度の増加が最も呼吸機能や胸郭拡張差に影響を及ぼす因子であることが明らかとなりました。
実際の高齢者の円背の特性も評価していく必要はありますが、特に骨盤肢位の改善を図ることで胸郭可動性や呼吸機能の維持や改善が図れる可能性がありますので、臨床でも実践してみると良いかもしれません。また、留意する点としては、骨盤は過度に後傾していませんが、胸椎の後弯が強いケースも臨床ではよく見かけるかと思います。その際は、骨盤からではなく直接、胸椎の後弯にアプローチをしてみるのが良いかと思います。後弯している部分を評価して介入していきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。