はじめに
こんにちは、taiです。
本日は、赤羽根良和先生の書籍「ひざ100」より、拘縮と疼痛を改善させる為の概念としたトランスレーション理論について説明したいと思います。
私見も含めての内容になりますので、気になる方はぜひ本書を確認してみて下さい。
今回のトランスレーション理論が理解できることで、運動器疾患を中心に拘縮由来の疼痛除去がきちんと手順を踏まえながら実践できると思います。
内容
初めにトランスレーション理論とは
「拘縮の存在が関節周囲組織の高度バランスを崩し、正常な軌道から逸脱した関節運動を引き起こす」
ことを指します。
これだけでは、やや難しいので下図に示す、球関節である肩関節で考えてみましょう。
例えば、肩の後面にある筋や関節包が硬くなると、上腕骨頭が前方に変位しやすくなります。
この上腕骨頭が前方変位した状態で肩の屈曲を実施するとどうでしょうか?前方の組織間でインピンジメントを生じ、疼痛が生じる可能性があります。
本来、伸びるはずの組織が硬くなったり、円滑に組織間を滑らなくなる滑走障害により関節拘縮が生じ、結果として関節は求心性が保てずにブレを生じて疼痛が出現しやすくなります。
次に膝関節でも確認してみましょう。
初めに大腿四頭筋などの前方組織が硬い状態で、膝関節を屈曲させると、屈伸軸は後方に変位してしまうため、半膜様筋などの後面筋や後方組織に剪断力などのストレスが掛かることになります。
同様に、半膜様筋などの後方組織が硬い状態で、膝関節を伸展すると膝蓋下脂肪体などの前方組織にストレスが加わり、疼痛の原因となります。
臨床での手順・考え方
臨床で、運動器疾患など拘縮由来の疼痛が生じていた場合の手順をお伝えしたいと思います。
①まず、初めに疼痛が生じている組織を評価します。例えば、膝関節伸展を強制した際に膝前面に疼痛が生じていたとします。
この際、評価をしていく中で膝蓋下脂肪体が痛みを出していたとします。
そして、膝蓋下脂肪体をアプローチした結果、疼痛が残存していた場合、次のステップに進みます。
②次に、トランスレーション理論を考慮して後面の組織の硬さを評価します。
そして、半膜様筋などの後方組織に硬さを見つけた場合は、そこをアプローチしていきます。
その後、前面の痛みが軽減・消失した場合は後面筋の硬さにより膝蓋下脂肪体がストレスを受けていたと言えるわけです。
もし、後面筋の組織にアプローチしても前面の疼痛が取り切れない場合は、その他の隣接関節の影響も考えられますので視野を広げると良いかと思います。
上記の考え方は、どこの関節でも同様に用いることができます。また、トランスレーション理論を用いることで頭の中で整理して考えられるようになるので、やみくもにストレッチをしたりすることが大幅に減少するかと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は、拘縮と疼痛除去の為のトランスレーション理論について解説しました。良く若手の頃は、痛い組織にアプローチした後にどうステップを踏んで考えていけばよいのか分からなくなっていましたが、今回の理論を理解しておくことで整理して考えられるようになるかと思います。
おさらいです!!
拘縮由来の疼痛除去のステップは①疼痛のある組織にアプローチする。②次に拮抗する側の硬さを評価・アプローチし疼痛が改善するか評価する。=疼痛が出ている組織の反対側をアプローチする!!③それでも改善しない場合は他の隣接関節など広い視野で評価していく。
となります。今回の例は屈曲・伸展などの矢状面上での動きを例に挙げましたが、前額面や水平面でも同様に考えられます。
是非、臨床で取り入れてみて下さい!!
最後まで読んでいただきありがとうございました。