はじめに
こんにちは、taiです。
本日は、先月に行われた第20回日本神経系理学療法学術大会にオンラインで参加した内容で、個人的にとても関心のあった筋シナジーについてお話したいと思います。
特に、演題者であった電気通信大学の舩戸徹郎先生が発表されました内容をご紹介したいと思います。
臨床への活かし方など私見も含みますので是非、原著「Muscle synergy analysis yields an efficient and physiologically relevant way of assessing stroke"」
か「脳卒中の回復評価法を神経活動変化から再検証~神経メカニズムに基づく脳卒中回復評価への応用に期待~」をご確認頂ければ幸いです。
内容
目的:
①脳卒中患者の回復度に関する指標である Fugl-Meyer Assessment(以下 FMA) テストを受けている患者の筋活動の特徴を明らかにすること、②FMA がどのような筋活動の回復を評価しているのかを初めて明らかにすること。
※FMA:反射や麻痺側の運動機能、感覚、バランス、関節可動域、関節痛などを総合的に評価できる指標
対象:
脳卒中患者(20 名)及び健常者(7 名)を対象とした。
方法:
上半身に関連する37項目のFMAの評価動作中の筋活動を計測した。
筋活動の測定部位は上肢と体幹を含めた 41 種類の筋電の活動を計測し、各課題遂行時における筋シナジーを解析した。(図参照)
※筋シナジー:動作中に複数の筋が協調(同期して)して活動を行い、この同時に活動する筋のグループを筋シナジーと呼ぶ。
結果:
①FMAテストを受けている患者の筋活動の特徴
健常者のFMA実施中の筋活動の分析を行うと、13 種類の筋シナジーを組み合わせて全てのタスクを遂行していた。(図参照)
各筋シナジーは、それぞれ上腕、前腕、体幹後部といった身体の各部位の筋の集合によって構成されていた。
37 種類の FMA の動作がどの筋シナジーによって構成されているかを調べると、上腕を用いる課題においては上肢に関連する筋シナジーが働き、前腕を用いる課題においては前腕に関連する筋シナジーが活動するなど、それぞれの身体部位に関連した筋シナジーが働いた。また、すべての動作おいて体幹後部に対応する筋シナジーが活動していた。
また、脳卒中患者の重症度別での筋シナジーの影響についてみると、軽症者では健常者に比べて体幹後部の筋シナジーの活動が上昇し、重症者では逆に減少していた。
よって、上半身すべての動作において体幹後部の活動が重要であり、タスクの遂行がうまくできなかった重症患者では、体幹がうまく使えていなかった可能性がある。
②FMA がどのような筋活動の回復を評価しているのか
次に、FMAの スコアによって評価された回復度と筋シナジーの変化を調べるため、健常者でみられた13個の筋シナジーと各患者の筋シナジーの間の相関を計算した。
軽症患者では13個の筋シナジーと患者の筋シナジーの間に1対1の対応関係があるのに対して、重症になるに従って対応が崩れ、各患者の筋シナジーは複数の筋シナジーが融合するように構成されていた。(図参照)。
さらに FMA スコアが低下(重症度が上昇)した患者ほど筋シナジーの融合度が高かった(図参照)。機能低下が顕著な重症の患者では、運動指令を個々の筋シナジーごとで与えられず、(融合した)不必要な筋シナジーが同時に活動していると考えられ、このような神経系の性質が FMA スコアに反映されていた。
臨床への活かし方
今回の文献より、上肢へのアプローチを行うには体幹がきちんと働いていた方が上肢がより使用しやすくなると思われます。
よって、まずは姿勢が保持てきているかを評価し、できていないのであればまずは体幹にアプローチをしていく必要があります。
また、麻痺の影響により体幹が麻痺側へ側屈していたり肩甲帯から下制していたりすると上肢も働きずらい為、前方に机などを使用し体幹が働きやすい環境調整を行うことも重要かと思われます。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は、筋シナジー解析を用いた Fugl-Meyer Assessmentの筋活動の特徴とはという内容でお話ししました。個人的には、実際の患者さんにFMAで評価時にみられる筋活動を筋シナジー解析を用いて得られた知見の為、臨床に活かしやすいと感じました。また、今まで体幹が重要とのことで下図に示すような腹内側系などの神経学的な知見が実際の現象により明らかにできたことは、重要なエビデンスかと思いますし意識して臨床に取り入れていく必要があるかと思います。
是非、皆さんも参考にして明日からの臨床を一緒に頑張っていきましょう!
最後まで読んで頂きありがとうございました。