セラピスト向け

極める!起き上がりの評価ポイント

こんにちはtaiです。

今回は起き上がり動作について、見るべきポイントと臨床での活用法をお伝えしたいと思います。前回の寝返り動作と同様に起き上がりのパターンにもいくつかの種類がありますが、今回は上肢を用いたパターンを概説していきたと思います。(ちなみにもう一つは腹筋を用いて起きるパターンです)

参考文献は「臨床動作分析」と「患者さんの主観的体感とリハ治療」です。私見も含まれていますので気になる方は本書をご確認下さい。

見るべきポイント
1.背臥位で腰背部の過剰な固定がなく、脱力位が取れているか。
2.顎が引けて頭部挙上が行えているか。
3.移動側の肩甲帯が前方突出・外転により支持側上肢のon elbowまで行えているか。
4.非移動側上肢のon elbow~on hanndまで体幹回旋を用いて行えているか

大別すると上記のような4つになります。今回は、左片麻痺と想定して非麻痺側への寝返り動作を概説していきたいと思います。

1.背臥位で腰背部の過剰な固定がなく、脱力位が取れているか。

初めに腰背部や麻痺側上下肢含めた全身の過緊張がなく、脱力位になれているか評価しましょう。脱力位といっても弛緩しているのも良しというわけではなく、適切な筋緊張で構えが行えている状態をいいます。詳しくは、また後日ブログで書いていきますのでまずは過緊張が生じている個所がないか、確認して下さい。注目箇所としては、頸部の過伸展、肩甲骨外転、腰背部の伸展(反り腰)です。 過緊張がある場合は、できるだけ全面接触するようにタオルを使用しましょう。そうすることで過緊張している部位の過剰な固定が軽減し、全身が連動して動きやすい状態なります。ちなみに…以前ブログでも深呼吸を実践してみよう!!でお伝えした深呼吸でも過緊張は軽減できますので良ければ確認してみて下さい!

脱力できる環境を作っておく

2.顎が引けて頭部挙上できているか。

次に起き上がる際のスペースを上肢で作っておきます。※この際、上肢でベッド端を掴む方が多いですが、そうしてしまうと背筋などの後面筋が働いてしまう為、把持しないようにしましょう。また、下肢も図では消えてますがやや外転位にしておくと下肢の重みも利用しやすくなります!そうすることで移動する際にカウンターウェイトとしてのつり合いをとりやすくなります。動き始めに重要なのが頭部挙上です。きちんと頭部挙上が行われることで体幹の屈曲・回旋の主動作筋である腹部が働きやすくなります。注意点として、頚椎は屈曲できていても上位頚椎が伸展し顎が出た状態での頭部挙上は背筋が促通されるため、必ず顎が引ける上位頚椎からの屈曲を確認しましょう。

寝返りするスペースをとっておく

3.移動側の肩甲帯が前方突出・外転により支持側上肢のon elbowまで行えているか。

その後、頭部挙上に追従するように移動側肩甲骨の前方突出と外転が行えるか確認しましょう。非効率なパターンでは床を押そうと肩甲骨が下制・内転し運動が逆方向に出現しやすいので、その場合は誘導して学習させましょう。特に脳卒中の方で多くみられ随意性が低い方は,必ず麻痺側上肢を腹側において肩甲骨の前方突出が行いやすいようにポジショニングしておきましょう。また、肩甲骨の動きに伴い胸郭が回旋していきますが、体幹の可動域制限がある場合は柔軟性を出していく必要があります。今回の場合は、左肩が右肘の直上近くまでくるために、左外腹斜筋と右内腹斜筋が働く必要があります。また、下肢の重みもカウンターウェイトとして働くように股関節屈筋群も働く必要があります。くれぐれも腰背部が反ったりしないように、常に前面筋が働き続ける状態を作りましょう。on elbowまでが一番難しく代償パターン(頭部伸展、肩甲骨後退、体幹の回旋障害)が出やすい為、反復して適宜誘導しながら練習するのも良いと思います。

4.非移動側上肢のon elbow~on handまで体幹回旋を用いて行えているか

on elbow~on handまでは、手掌部の床反力を用いつつ、体幹の屈曲・回旋にスイッチします(今回の場合は、右外腹斜筋と左内腹斜筋により体幹を正面に起こします)。よって、起き上がり動作では、効率よく左右の腹斜筋により体幹の回旋が起きる必要があり、脳卒中者ではとても難しい動作になるといえます。逆をいうと、起き上がり動作が上達することで、他の動作にも汎化しやすくなります!また,長座位完成時に問題となるのがハムストリングスの短縮です。ハムストリングスの短縮があると骨盤が後傾位となり体幹が伸展しにくくなるため、ハムストリングスも緩めておく必要があります。(自分もハムストリングスが硬いので、骨盤後傾位となりやすいです…)

別法(下肢を投げ出して端坐位までになる起き上がり方)

次に下肢を投げ出して端坐位までになる起き上がり方別法を紹介します。また、麻痺側の上肢を認識しずらい方や肩甲骨の前方突出を行いやすくなるような方法にて記載しますが、上記で示した内容でも端坐位までの仕方は同じですので行いやすい方で実施して頂ければと思います。※肩の痛みには配慮が必要です。

初めに両手を組み、そこから更に天井に近づけるようにして、肩甲骨前方突出を行います。次に頭部挙上しながら体幹を回旋していき、肘がついたところでon elbowになります。頭部と左肩が右肘の直上にくるまで回旋して下さい。※回旋が足りず頭部や肩が後方に残ってしまうと、肩甲骨が後退するなど逆方向の運動になりon elbowになれないので注意して下さい。また、on elbowになるタイミングで上半身との重みのつり合いをとるように下肢をベッド端に振り出すように誘導します。最後は手掌部の床反力を用いて端坐位を完成させます。下肢を出すタイミングは実際に自分で行ってみるとイメージしやすいかと思います!

最後に完成後の長座位や端坐位から背臥位へは、今回の動作の逆になります。しかし、背臥位になる方が遠心性収縮を求められ難易度が高くなり、“バタン”と性急に横になる方が多いと思います。よって、起きる・寝るの両方で行えるように練習することが必要です!

いかがだったでしょうか?起き上がり練習も実際には柵を使えば行える方も多い為、練習を行わないことも多いのではないでしょうか?しかし、実際にその方法で動作を遂行していると、他の動作にも悪影響を及ぼす恐れがあります。まずは今回提示しました評価するポイントを踏まえて評価を行い、動作練習に繋げていけると良いと思います。

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