はじめに
こんにちは、taiです。
今回は前回の続きである、感覚障害のある身体でも知覚できる?Part1、感覚障害のある身体でも知覚できる?Part2の続きとなりますので是非、前回のブログをご確認頂ければ幸いです。
富田昌夫先生の理論を用いたものですので、正確な知見は本書の臨床動作分析の確認をお願い致します。
個人的には確実に臨床の視点が変わりますので、大変お勧めの良書です!!
内容
今回は、リモートタッチについて深堀りしてお伝えしたいと思います。
リモートタッチとは
❝環境と物理的に衝突することで発生する知覚❞をいいます。
リモートタッチは環境に対する様々な運動や学習が必要であるとされています。
Carelloらは、バークリーらの実験において、棒の長さは3種類、壁までの距離も3種類として、計9種類の組み合わせで、棒の長さの知覚と壁までの距離の関係を計測し、棒の長さや壁までの距離をそれぞれ独立して知覚することが可能なことを検証しました。
また、玉垣らは四肢麻痺を呈する完全麻痺の頚損者と健常者との比較において神経障害の有無が触知覚系に及ぼす影響について以下を検証しました。
目的:①感覚・運動麻痺を有する患者でもリモートタッチの知覚が達成できるか、②棒の長さと接触面までの距離を選択的に注意しておのおの独立して知覚できるか
結果:道具と接触面の選択的注意に関しては、健常者は道具と接触面をそれぞれ独立に知覚できた。頚損者では、道具の知覚時には接触面の性質の影響を抑制して道具を知覚することができるが、接触面での知覚時には道具の性質の影響も被ってしまうことがわかりました。
頚髄損傷者は多数存在する情報の候補からタスク要求に対応した情報だけを選択的に特定することについて部分的に困難を示しました。
つまり、運動障害によって知覚が変化する可能性が高いこと、おのおのの性質に対応した探索運動パターンの発現があることに加えて、特定の性質を明確にするためには特定の探索運動が必要であるという、運動が知覚を促進することを示唆する知見を報告しました。
まとめ
ダイナミックタッチは 基礎定位(身体感覚の獲得)のための方略であり、学習、時間、感覚も関係なく動かすことによって知覚できるためのシステムです。(下図参照)
注意点としては、ただ揺らせば良いのではなく、全身の過緊張がなく(特に非麻痺側)、麻痺側含めた全身が揺れていることが重要です。麻痺側が動かしづらい・知覚しずらい場合は、セラピストが介助して注意を向けさせることも知覚させるための大切なアプローチです。
よって、ダイナミックタッチは急性期や回復期などの時間軸や麻痺などによる障害に左右されず不変と考えられるが、リモートタッチはダイナミックタッチを基礎として持った上で環境にある情報(アフォーダンス)を触覚的側面から抽出する方略です(反力や接触から発生する音など)。この知覚の精度を上げるには学習や練習が必要であり、経験の積み重ねが重要です。
いかがだったでしょうか?今回はリモートタッチについてご説明しました。何気なく私たちは普段靴を履いて、靴の上から床の性質を感じたりやバランスをとっており、普段からリモートタッチは多用していますね!リモートタッチはダイナミックタッチをベースとして、環境の情報を触覚的側面から知覚する方略であるため、学習が必要となっていきます。臨床においても、運動障害や感覚障害のある麻痺側下肢に対しての荷重練習は床反力を通じたリモートタッチであり、学習していくことで麻痺側での支持やバランスがとれるようになっていくかと思います。配慮する点としては、患者さん自身が麻痺側へ注意が向いているか?荷重しやすいアライメントや姿勢になっているか?不安や恐怖心などから筋緊張が亢進していないか?などは、リモートタッチを行う以前にダイナミックタッチや情動が適切に働いているのかを評価していけるとよいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。