はじめに
こんにちは、taiです。
今回は前回の続きである、感覚障害のある身体でも知覚できる?Part1の続きとなりますので是非、前回のブログをご確認頂ければ幸いです。
富田昌夫先生の理論を用いたものですので、正確な知見は本書の臨床動作分析の確認をお願い致します。
個人的には確実に臨床の視点が変わりますので、大変お勧めの良書です!!
内容
前回の復習となりますが、脳卒中により感覚障害がある場合は、どうやって知覚しているのでしょうか?
その答えとなる接触システム(アクティブタッチやダイナミックタッチ)について説明していきたいと思います。
知覚システムの考え方としては体性感覚だけでなく関節覚や運動覚などの様々な情報から様々な知覚が生じる多対多の関係性で成り立っていると考えられています。つまり、体性感覚が脱失していたとしても、その他の運動覚や振動覚、皮膚などの張力などが動くことによって知覚され、姿勢を保持できたりできるという訳です。この考え方、すごく大事ではないでしょうか?
そしてこの多対多の関係性で、かつ能動的な探索活動がアクティブタッチ(能動的触知覚)と呼ばれるものになります。
その際に、硬貨を指で触ったながら、大きさや穴があるかを探索したりします。つまり、触覚だけでなく指を動かす為に関節覚や運動覚などを総動員して知覚します。
このように、普段の生活では触覚等の体性感覚だけでなく、他の知覚も用いながら全身で知覚しています。この全身で知覚するという意味でアクティブタッチが重要となります。
具体的な方略としてダイナミックタッチ(運動性触圧覚)やリモートタッチ(遠隔地触知覚)があります。(図参照)
今回は、ダイナミックタッチについて深堀りしてお伝えしたいと思います。
ダイナミックタッチとは
❝環境と物理的に衝突することなく空間で対象物を振ったり動かしたりするときの知覚❞をいいます。
逆に感覚・運動障害とは別に不動がボディイメージを崩している可能性もあるといえます。
ダイナミックタッチは筋感覚を含む運動性触覚のことをいいます。
下図を見て下さい。
これはTurveyが行った有名な実験ですが、視覚を遮断して対象物(ここでは右手の棒)を振ったり、動かしたりします。
すると、右手で動かした実際の棒の長さをおおよそ左手でも知覚することができます。
また、その対象物の長さや幅、どのような形をしているのか、対象物の全体像が得られるのが皆さんにも分かるかと思います。
これはダイナミックタッチの知覚と呼ばれています。
また、先行研究においても、神経障害があってもダイナミックタッチは可能であるとの報告もあります。(Carello,2006、Silva,2007、Koike,2007)
更に、不安定な状況下(バランスディスクやロデオマシーン上)でダイナミックタッチの実験(棒を振って知覚する)も行ったが、運動の自由度や姿勢の影響を受けないとの結果でした。
つまり感覚障害の影響や姿勢、運動の自由度などに影響せずに確定的に知覚ができるといえます!
しかし、脳卒中者では過度な緊張により姿勢が崩れる場面をよくみかけ、過度な筋緊張を抑制し安定した姿勢になることで知覚できるようになることは臨床上良く経験しますよね。
すると上記の2つで矛盾が生じます…これは何が影響しているのでしょうか?
2つのフィギュア選手と脳卒中者を比べると、違いとしてあるのは心理反応ではないでしょうか?
つまり、フィギュア選手は自信をもって演技ができるため氷上をしっかり知覚できますが、脳卒中者では不安から支持面を知覚できずに過度に筋緊張が亢進することが影響している可能性があります。
よって、臨床上では不安などの情動に配慮した環境調整を行い安定した姿勢を得ることで知覚しやすくなると思います。
さて、ダイナミックタッチについて感覚や姿勢などの影響は受けずに、対象物を振ることによって知覚する方略です。
また、緊張したときに自分の手足を振って緊張を落とすのもこの方略です。手足を振ることによって、私たちはボディイメージを再構築しているともいえます。
つまり、ダイナミックタッチは基礎定位(身体感覚の獲得)為の方略であり、学習や時間、感覚も関係なく動かすことによって知覚できるシステムとなります。
更に、重要なのが他者に動かされれるダイナミックタッチにおいても一人で行うダイナミックタッチと同様に実際の棒の長さを知覚することができました。
よって、能動的に動く(探索する)こととは、他動的な動作でも意識・注意を対象物に向けることで同様に知覚するできるということになります!
話が長くなってしまったので、次回はリモートタッチと能動的な探索活動=アクティブタッチ(能動的触知覚)の能動的探索活動とは???について説明していきたいと思います。
まとめ
いかがだったでしょうか?今回はダイナミックタッチについてご説明しました。特に振ることによって、身体感覚を再獲得できます。この方略には特に学習や時間、感覚は関係なく動かすことによって知覚することができます。知覚するためには心理反応が重要になり、脳卒中者や疼痛を有する方では、配慮してアプローチしていくことが重要となります。また、麻痺の影響で麻痺側が動かしずらかったとしてもセラピストが介助し一緒に動くことで知覚することができる可能性があります。臨床では、脱力位で患者さん自身が自分の体を揺すってみるのもボディイメージの再構築のための一つのアプローチとしてはよいかと思います。また、座位での座骨支持を知覚するために能動的に左右重心移動をしてみる、その際に麻痺側の座骨に荷重できているかが分からなそうであれば、セラピストが手で座骨を支持し知覚しやすくする工夫も大切かと思われます。座骨が知覚でき、左右への重心移動がスムーズに行えることで大殿筋などの筋発揮も行えるようになっているかと思いますので、患者さんだけでなくセラピストも一緒に動いて知覚していくことも非常に重要ですので、常にアンテナを張って取り組んでいきましょう。
最後まで読んでいただきありがとうございました。