はじめに
こんにちは、taiです。
本日は、左アテローム血栓性脳梗塞の方を担当し、左右だけでなく前後へも姿勢定位障害を呈した患者様がいらっしゃったので報告したいと思います。
今まで、左半球での姿勢定位障害(矢状面での前後の姿勢定位障害も含め)を呈する方を担当しなかったので、ブログに残しておこうと思います。
内容
症例紹介
80代男性
診断名:アテローム血栓性脳梗塞(左内頚動脈狭窄に伴ったMCA領域での梗塞)
理学療法評価
・Br.stage:上肢:Ⅱ、手指:Ⅰ、下肢:Ⅱ※キッキングなどの随意性あり、アンクルの随意性はみられず
・感覚:表在・深部共に軽度鈍麻
・視空間認知:非麻痺側側へ5㎝偏位
・関節感動域:麻痺側上肢は屈曲位、下肢は軽度屈曲位で著明な制限なし
・筋緊張:MASで1+※ガストロ
・体幹機能(SIAS):腹筋力0(座位をとれない)、垂直性0(座位をとれない)※麻痺側へ押したり急に前後へ姿勢の崩れあり
・立位:平行棒では非麻痺側上下肢で麻痺側側へ押してしまい重度介助
ADL:座位保持困難、COM可能だが嗄声あり、経口摂取可、移乗:全介助※麻痺側へ崩れてしまうこと多い
発症してから1か月が過ぎての介入でした。
問題点とアプローチ
本ケースは、広範な左の脳梗塞であり、姿勢定位障害よりADLの著しい低下がみられました。
画像上においては皮質レベルでのMCAに広範な梗塞巣があり、また左の上頭頂小葉や下頭頂小葉の損傷がみられました。
文献において、
・上頭頂小葉は四肢の空間内での位置や、どのような姿勢になっているかを認知する、すなわち姿勢の識別やbody imageの形成に関与すると考えられている。また、頭頂連合野は多感覚の情報を受け取るmultimodalニューロンが多く存在する。
・頭頂連合野には各種感覚情報を統合処理し、空間における身体感覚の統合に重要な役割を果たす機能が存在する。
※松山ら,頭頂葉の機能的役割とその損傷に起因する全身性の運動障害より抜粋
また、Pusher症候群は右側の視床後外側核や島後部、帯状回などが代表的だが、先行研究では下頭頂小葉やMCA領域、皮質から皮質下損傷など様々な病巣で出現する為、本ケースにも該当する可能性がありました。
ただし、麻痺側へ押す場面以外に、前後への姿勢定位障害もみられ、座位時にご本人からも「真っ直ぐのつもりだけど倒れちゃう」との発言あり、前者の頭頂連合野の損傷の影響が強いのではと予測しました。
アプローチとしては、非麻痺側へ荷重ができるように起立台の使用や非麻痺側上肢をon elbowで支持しての立位練習を重点的に実施しました。
その後、麻痺側への姿勢定位障害は比較的早期に改善しましたが前後への姿勢定位障害は残存していました。
その後は、早期に施設方向になってしまいましたが、最終では移乗は軽介助で可能となり支持物があれば立位保持も可能となりました。
姿勢定位障害は主に右脳で生じやすいといわれていますが、本ケースでは左脳で生じていました。本ケースを通じて脳の機能を更に深めなくてはいけないと思いました。
まとめ
本症例を通じて、pusher症候群だけでない姿勢定位障害を有した方を担当し、改めて頭頂葉の機能の重要性を学ぶことができました。介入初期は前後への姿勢定位障害がなぜ生じているのかが整理して理解できませんでしたが、今後は、今回の経験を踏まえて頭頂葉だけでなく、その他の脳の機能についても学んで臨床に活かせるようにしていきたいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。