セラピスト向け

行動変容-自分や患者の習慣を変えるメカニズム- TTMについて

患者の行動変容を助けるために、私たちが行う具体的な介入内容があります。
それは、トランセオレティカル・モデル(TTM)であり、その内容を簡単に解説します💡

【STEP1のおさらい】

★行動変容の実施のポイント
対象者の行動を変えようとする意思(目的)があらかじめ存在しており、
行動変容を生じさせるために働きかけ、人の行動が変わっていくこと。

★トランセオレティカル・モデル(TTM)の活用について
心の状態や、各ステージ分類に応じて、働きかけ(介入)を変えることで効果を高める方法。

文献1より引用

★行動変容のステージ分類について
※前記事「行動変容:その1」にて解説あり〼
Step1:前熟考ステージ
➡行動する意思なし
Step2:熟考ステージ
➡6カ月以内に行動する意思あり、行動なし
Step3:準備ステージ
➡1か月以内に行動する意思あり、行動なし
Step4:実行ステージ
➡行動して6カ月以内
※行動によるメリットが少ないので逆戻りの可能性が高い
Step5:維持ステージ
➡行動して6カ月以上継続
※行動によるメリットがあるが、逆戻りする誘惑はある

★患者への働きかけ(介入)について
現在の患者のステージを次のステージに移動する働きかけをする行動療法を活用する。
前半は、自身への経験をもとにした知識・感情への働きかけを中心に、
後半は、周りの環境への働きかけを中心に行われる。

 

【働きかけ(介入)=10のプロセス】

※今回は「散歩などの運動習慣をつける」を例として介入例を示します。

【№1】意識の高揚(なるほどと思う💡)
内容:その人自身が、新しい情報を探す、フィードバックを貰うこと
セラピスト介入例:健康雑誌を読むことを勧める、簡単な知識を与える

【№2】ドラマティック・リリーフ(ドキッとした💡)
内容:問題行動による激しい感情的経験を伴うこと
セラピスト介入例:運動不足により重い疾患にかかった人について考えさせる

【№3】自己再評価(生活変化のイメージをする💡)
内容:現在の行動に関する、自己の価値観を再評価すること
セラピスト介入例:運動不足でいる生活と、運動している生活ではどうなるかをイメージさせる

【№4】環境的再評価(迷惑や影響をイメージをする💡)
内容:現在の行動が、どのように社会的環境に影響を与えているか評価すること
セラピスト介入例:運動不足によって生じる家族や友人への影響を考えさせる

【№5】社会的開放(社会でどうなっているか知る・気づく💡)
内容:運動習慣の促進が社会でどのように進んでいるか気づく、利用の可能性を探す
セラピスト介入例:散歩道を紹介する

【№6】反射条件付け(代わりになる行動を行う💡)
内容:運動の代わりとなる行動を行う
セラピスト介入例:近い距離ならば、車でなく歩いていくように勧める

【№7】援助関係(誰かに助けてもらう💡)
内容:行動を行うため、他者の援助を信頼し、受諾し、利用すること
セラピスト介入例:スポーツを行う間、子供を預かってもらう

【№8】強化マネジメント(自分に褒美を与える💡)
内容:行動を維持するために、内容を変化させる
セラピスト介入例:習慣が1週間続いたら、自分の褒美を与える

【№9】自己解放(誰かに宣言する💡)
内容:行動を変化させるため行う選択、言質、信念
セラピスト介入例:家族や友達に運動することを宣言する

【№10】刺激コントロール(きかっけとなる合図をつくる💡)
内容:行動のきっかけとなる状況
セラピスト介入例:玄関の目立つところにウォーキングシューズを置く

 

【ステージに合わせて、プロセスを変える】
前熟考ステージ(行動する意思なし)
【№1】なるほどと思う💡
【№7】誰かに助けてもらう💡
【№5】社会でどうなっているか知る・気づく💡
※これらのプロセスは、世間で話題となっている運動の利用性についての一般的な考え方を分かりやすく示すことで実施される。
熟考ステージ(6カ月以内に行動する意思あり、行動なし)
【№1】なるほどと思う💡
【№9】誰かに宣言する💡
【№2】ドキッとした💡
※これらのプロセスは、現在の状態が、人々の生命に影響を与えていることを深く気づかせることで実施させる。そのうえで・・・
【№9】誰かに宣言する、他人から激励を受ける💡
【№5】現在の行動が社会でどうなっているか知る・気づくことで実践する💡
を行うと、より効果的である。

準備ステージ(1か月以内に行動する意思あり、行動なし)
【№3】生活変化のイメージをする💡
【№7】誰かに助けてもらう💡
【№8】自分に褒美を与える💡
※これらのプロセスは、行動を起こす準備ができており、自己への褒美のように、行動と関連する方法を考えさせるなどの、議論をはじめることを実施させる。

実行ステージ(行動して6カ月以内)
【№9】誰かに宣言する💡
【№10】きかっけとなる合図をつくる💡
【№8】自分に褒美を与える💡
【№6】代わりになる行動を行う💡
※これらのプロセスは、行動を強化するために、運動維持の確約を示す誓約書、環境を変えること、自己報酬システム、維持するための代わりの行動が含まれる。

維持ステージ(行動して6カ月以上継続)
【№10】きかっけとなる合図をつくる💡
【№6】代わりになる行動を行う💡
【№8】自分に褒美を与える💡
※このプロセスは、運動を行わないで楽したいという誘惑は存在するものの、誘惑は弱く、頻度も少ない。

 

【セルフエフィカシー(自信)への介入】

・セルフエフィカシーとは、課題に対して、適切な行動を成功に遂行できるという、予測および確信のこと。
・セルフエフィカシーに影響を与える、4つの情報に介入することでより活性化する。
(1)遂行行動の達成:過去の成功と失敗の体験
(2)代理的体験:他人の成功と失敗の様子を観察し、代理的体験を持たせる
(3)言語的説得:指導者から能力があることを言語形式で受ける
(4)生理的および情動的喚起:能力を身体部位から感じ取ること、その情報から上達したことを感じ取ること
・特に初期ステージでは、セルフエフィカシーを増強させる「4つの情報」が必須である。

 

【TTMの構成概念】

文献1より引用

【まとめ】


・行動変容へのアプローチとして調べた結果、TTMというアプローチを知りました。
・TTMには核となる構成概念が4つありました。

(1)行動変容の5つステージ
→前熟考、熟考、準備、実行、維持
(2)行動変容への10プロセス
→行動変容を促進するために使用するステージに合わせた働きかけ
(3)意志のバランスが関与
→行動を行うデメリット(負担)に対するメリット(恩恵)の重みづけをする
(4)セルフエフィカシー(自信)が関与
→「できる」という見込みをつけさせる

・他者の行動を変えたい!自分の生活習慣を変えたい!変えなければ!
・そう感じたらぜひ試して下さい。
・治療のキッカケになるかもしれません☺

 

【参考文献】
1)高齢者の運動と行動変容―トランスセオレティカル・モデルを用いた介入
2)アレルギー用語解説シリーズ,行動変容(behavior modification)

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