セラピスト向け

EBPTの実践(STEP1:なぜEBPTが必要か?)

本日はEBPTの実践にむけて『STEP1:なぜEBPTが必要か?』について解説したいと思います。

EBPTの実践
『なぜEBPTが必要か?』

要点のまとめ

なぜEBPTが必要か?

臨床判断:医療現場では、専門的知識や経験に基づく臨床判断の連続によって遂行される

・理学療法における臨床判断:様々な特性に即した評価や介入方法の選択に関する臨床判断の「妥当性」が重要となる

・従来の臨床判断:経験則や権威者の意見に偏り過ぎた臨床判断が多く、最適な判断にならない可能性がある

・EBPTの提唱:経験則などの不確実な状況下で臨床判断を行うためは、EBMの概念に則した方法として「EBPT」が提唱されている

・EBPTの進め方:5段階のステップの進め方を理解するとともに、臨床疫学的な概念や研究方法論の理解も深めると良い

・EBPTの課題:EBMの概念がそのままEBPTに当てはめにくい場合がいくつかある

さいごに

★彡

なぜEBPTが必要か?

■判断:Decision Making

人間の生活は様々な判断(意思決定)の連続によって営まれている

意思決定とは「ある目標の達成に向けて、複数の選択肢の中から1つを選ぶこと」を指します。何か解決すべき課題が生じているときに、判断(意思決定)が必要になるのです。

■臨床判断:Clinical Decision Making

医療現場では、専門的な知識や経験に基づく臨床判断の連続によって治療が遂行される

適切な臨床判断を行うためには、対象者の年齢、疾病特性、障害特性、環境因子、リスク因子、ニーズなど、多様な因子を考慮した総合的な情報処理を遂行することが必要です

■理学療法における臨床判断

様々な特性に即した評価や介入方法の選択に関与する臨床判断の「妥当性」が重要となる

臨床判断の妥当性が低ければ、理学療法の効果が低くなるだけでなく、患者の心理面や身体面に対してマイナスの影響を与える危険性もある

【補足】
妥当性:多くの主観的な判断を多数決で決めたときの多数派を指します

■理学療法における従来の臨床判断

経験則などに基づく臨床判断の背景には、偶然性や思い込みなどのバイアスの影響を受けることによって、個々の担当患者とっての最適な意思決定(判断)にならない可能性がある

経験則や権威者の意見に偏り過ぎた臨床判断では、理学療法の内容についての妥当性に問題がでるかもしれません

■EBPTの提唱

経験則や権威者の意見のような不確実な状況下で臨床判断を行うために、EBMの概念に則した方法として「EBPT」が提唱された

1991年にGayatt博士がEBMの概念を提唱し、日本理学療法士協会はこの概念を受け入れEBPTに名称を固有化し、科学的根拠に沿った理学療法の施行に努力してるいます。

【補足】
根拠に基づいた医療(Evidence-based Medicine:EBM)
入手可能で最良の科学的根拠を把握した上で、個々の患者に特有の臨床状況と価値観に配慮した医療を行うための一連の行動指針や、個々の患者の臨床問題に対して、①患者の意向、②医師の専門技能、②臨床研究による実証報告を統合して判断を下し、最善の医療を提供する行動様式と定義されている。

根拠に基づいた理学療法(Evidence-based Physical Therapy:EBPT)
EBMの概念に基づいて、理学療法士による臨床判断を“経験則”だけに基づいて行うのではなく、①基本的な理論、②理学療法士の臨床能力や臨床経験、③患者さんの意向や価値観とともに、④質の高い臨床研究による検証結果であるエビデンス“も”含めて行うことによって、患者さんの臨床状況に即した安全で効果的な理学療法を実践するための行動様式と位置付けている。

■EBPTの進め方

EBPTの進め方は、
①患者に関する臨床的疑問(クリニカルクエスチョン)の定式化,
②患者の臨床的疑問に関連した情報の検索・収集、
③収集した情報の批判的吟味、
④批判的吟味を行った情報の患者への適用の検討、
⑤実施したEBPTプロセスの評価
という5段階のステップとなります。

多忙な臨床現場で効率よくEBPTを実践するためには、この5つのステップの進め方を正しく理解するとともに、臨床疫学的な概念や研究方法論についての理解を深めていくことが大切です。「STEP3:EBPTの進め方」で詳しく説明します。

■EBPTの課題

・エビデンスを構築していく上で、疾患別の評価フォーマットの標準化が不十分
・理学療法分野においてはランダム化比較試験の実施が困難な場合が多い
・理学慮法における介入変数が多様であるとともに、アウトカムが多様かつ断層的であるため同一の研究テーマに関するエビデンスが構築しにくい
・チーム医療の中で実施している理学療法としては、単独の介入効果の抽出には限界がある など…

EBMが医学モデルをベースに構築されているのに比べ、EBPTは身体機能モデルや生活機能モデルがベースのため、EBMの概念をそのままEBPTに当てはめられるかに関しては議論の余地を残しています

■さいごに

EBPTの実践として『EBPTはなぜ必要か?』について解説しました。

・臨床現場では「経験に基づく理学療法」は多数ではありますが、不確実な状況下での臨床判断を改善するため、科学的根拠を用いたEBPTは必要不可欠と感じました。

・EBPTの実践を行うことで、自身の理学療法を振り返りることが出来るかと思います。

次回は、EBPTの実践のため『STEP2:EBPTの意義』について解説していきます。

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