要点まとめ
・教示とは、自分がもっている「情報や知識」を相手に伝えることです。➡
・教示の効果は、課題の説明と運動イメージを引き出すこと。➡
・教示には、①口頭指示と②模倣・写真の2種類があり、模倣・写真をうまく使うことで運動イメージがしやすくなります。➡
・初めての運動を促す場合は「運動の要点を簡潔にまとめ、 簡単に」伝えます。学習が進むにつれ、詳細に教示します。➡
・運動イメージとは、頭の中で運動を再現することです。
・運動イメージには、筋感覚的運動イメージ(自分)と視覚的運動イメージ(他者)があります。
・自分がしているイメージの方が効果的です。
・初めての運動の場合は運動イメージの効果が乏しいので、実際に運動してみるか、動きをセラピストにサポートしてもらいましょう。
STEP1:リラックスできる環境を作る
STEP2:筋感覚的運動(自分)イメージする
STEP3:実際の運動と運動イメージを組み合わせる
STEP4:1回の運動イメージ時間は、実際の運動に近いかそれ以上にする
STEP5:可能な限り『詳細』に何度も繰り返す
1.教示
『教示(きょうじ)とは、「教え示す」こと、情報や知識を伝達すること』
■教示の効果
『運動課題を説明すること、動きのイメージを引き出すことの2面性を持つ』
■教示の種類
①口頭指示
②視覚情報(写真・模写)
『視覚情報(写真・模写)をつかうでことで、より動きのイメージがしやすくなる』
■口頭指示の注意点
『指示を多く与えるのではなく、運動の要点を簡潔にまとめ、 簡単に伝える』
指示として、①と②はどちらが分かりやすいですか?
①「左足に体重を100% 移動させ、右足の股関節と膝関節を少し曲げて、床から足を上げた後に、膝関節だけは徐々に伸ばしていき、足が床に着く瞬間はつま先を上に挙げた状態で一歩前に出して下さい」
②「右足を一歩前に出して、踵から床に着いてください」
■実施のポイント
『患者の学習が進むにつれて、より詳しく運動を教示していく方とより効果的』
2.運動イメージ
■運動イメージとは
『運動イメージとは、実際に運動することなく、ある運動を頭の中で再現すること』
【文献】運動イメージで30秒立ち上がりテスト、TUGのタイムが向上した Hirano 2015.
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■運動イメージの種類
『筋感覚的運動イメージとは、自分が実際に運動するイメージ。視覚的運動イメージとは、他者の運動をみているイメージ』
【文献】視覚的運動(他者)イメージよりも筋感覚的運動(自分)イメージの方が効果的である K.R. Ridderinkhof and M. Brass 2015.
■『運動イメージ』実践の流れ
STEP1:リラックスしてイメージ想起に集中できる環境を作る
STEP2:筋感覚的運動イメージを使用する(自分が実際に運動しているイメージ)
STEP3:実際の運動と運動イメージを組み合わせる
【文献】運動イメージによる運動パフォーマンス向上の効果は実際に身体を動かすトレーニングの効果よりも小さい A. Pascual-Leone 1995.
【文献】運動イメージは運動パフォーマンスを向上させるが,全く行うことができない運動には効果がない T. Mulder 2004.
STEP4:1回のイメージ想起時間は実際の動作時間に近くする
【文献】運動イメージを繰り返し行うと精神疲労が生じるため,一過性に運動パフォーマンスが悪化する V. Rozand 2016.
STEP5:可能な限り「詳細」に何度も繰り返す
【文献】イメージする動作で用いる道具(テニスラケットなど) に実際に触れることでより鮮明にイメージできるようになる N. Mizuguchi 2015.
■実施の流れ おさらい
①リラックス(環境配慮)
↓
②筋感覚的運動(自分)イメージ(実際の運動時間以上、かつ、詳細まで繰り返しイメージ)
↓
③パフォーマンス
↓
④再度運動イメージ
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本日の感想
運動学習を高める方法として『教示と運動イメージ』について解説しました。
【教示】
・私たちの知識や情報を相手に伝えることは、リハビリではよくあることです。
・今思うと、相手に運動をイメージしてもらうことは意外に難しいことで、そこに自身の臨床能力を向上させる可能性があるように感じました。口頭指示だけでなく、模倣や写真など使って効果をたしかめましょう。
【運動イメージ】
・頭の中で運動を再現することは運動学習に欠かせません。
・できる限り自分がしているイメージを心掛けましょう。
・初めて行う運動の場合は運動イメージの効果が乏しいので、セラピストが実際の動きをサポートしましょう。
次回は、フィードバックの方法について解説していきます。