セラピスト向け

麻痺とは? -What`s MAHI?- 運動麻痺の症状

はじめに

首や腰における脊柱管狭窄症ヘルニア術後合併症等にある「麻痺」について考えていきたいと思います。
首や腰の麻痺には、歩行中の足首上がらない下垂足ふらつき足底の異常感覚、筋肉痛と違った痛みなどがあります。
加齢により首・腰の障害が同時に現れる場合もあります。
私自身、神経系は不得意のため、まずは「麻痺」についての知識を学習し、評価や治療プログラムへ繋げていけたらと思います。

What`s MAHI?

麻痺とは、中枢神経あるいは末梢神経の障害により、身体機能の一部が損なわれる状態をさします。
運動神経が障害される運動麻痺と、感覚神経が障害される感覚麻痺があります。
どこのルートで、どの運動または感覚の神経が障害されるかで「麻痺」が出現する部位や症状が異なってきます。

運動麻痺について

まず運動麻痺について、大脳基底核~末梢の筋繊維までの運動繊維の遮断により生じる随意運動の消失であり、中枢性麻痺と末梢性麻痺に大別されます。

中枢性麻痺は、大脳皮質→内包→脳幹→脊髄→脊髄前角までの上位運動ニューロンの障害になります。
末梢性麻痺は、脊髄前角→末梢の筋に至る下位運動ニューロンの障害になります。

■運動神経系:錐体路(皮質脊髄路)の走行
・錐体路は、大脳皮質(上位運動野の中心前回)→放線冠→内包→大脳脚→橋を通り、約90%が延髄錐体で交差します。

ちなみに長期臥床や加齢による筋萎縮は神経の障害ではないため、運動麻痺ではありません
ここからは錐体路(皮質脊髄路)が関わる運動麻痺について考えていこうと思います

運動神経系の分類

①錐体路(皮質脊髄路)※下図の赤・緑・青線
大脳皮質→脳幹・脊髄を通り、手足や体幹へ運動指令を伝達する
・延髄の錐体を通過後に錐体交差するので、錐体交差までの障害は反対側、錐体交差後の障害では同側に麻痺が生じる

②錐体路(皮質延髄路)※下図の紫線
・顔面、舌、咽喉頭、眼球などへ運動指令を伝達する
・脳幹で皮質脊髄路は反対側の脳神経核へ入る

③錐体外路
・延髄を通過しない経路で、大脳基底核や小脳などが関与する。
・錐体外路が障害されると、不随意運動や筋緊張障害が生じる。

運動麻痺の症状

■運動麻痺は神経のどのレベルで障害が起きたかにより、麻痺の部位、筋緊張の程度、病的反射の症状などが異なる

■麻痺の症状の分布では、単麻痺・対麻痺・片麻痺・四肢麻痺に分けられる

■麻痺の程度による分類では、完全麻痺不全麻痺に分けられる

完全麻痺:随意運動が完全にない
不完全麻痺:麻痺の程度が不完全、あるいは麻痺の分布が部分的な状態

■中枢性麻痺
筋緊張や深部腱反射の亢進、病的反射の出現がある
・急性発症では弛緩状態であるが、経過とともに痙縮を示すことが多い
質的変化が特徴

■末梢性麻痺
・筋緊張の低下または弛緩、深部腱反射の消失、筋萎縮がある
量的変化が特徴

■麻痺の性質による分類では、痙性麻痺弛緩性麻痺に分けられる

痙性麻痺:筋緊張亢進、腱反射亢進、病的反射、巧緻運動障害、筋力低下
弛緩性麻痺:筋緊張低下、腱反射低下、粗大運動低下

運動麻痺の分類(まとめ)

上位運動ニューロン、下位運動ニューロン、神経筋接合部、筋の障害部位による症状の違いをのせます

引用:神経内科学テキストより

症状の分布による分類

単麻痺 monoplegia四肢のうち一肢のみ
中枢神経・末梢神経どちらの障害でも起こりうる
・対側運動野または頸部以下の同側脊髄障害末梢神経障害で生じる
・・・筋萎縮なし:脳血管障害、脳腫瘍(大脳皮質運動野)
・・・筋萎縮あり:末梢神経障害

片麻痺 hemiplegia:一側の上下肢
・脳血管障害や脳腫瘍による対側の錐体路で生じる

③片麻痺 (交代性片麻痺):病変側の脳神経麻痺(顔面・舌)、反対側の上下肢
・脳血管病変

④片麻痺 (交叉性片麻痺):同側ではない上下肢
・脳血管病変

四肢麻痺 tetraplegia両側の上下肢
・両側の大脳~神経筋接合部・筋いずれでも生じる
・・・痙性麻痺:大脳両側性の障害(上肢屈曲位、下肢伸展位)、脳幹の障害(四肢伸展位)
・・・弛緩性麻痺:頚髄障害(腫瘍、椎間板ヘルニア、外傷など)、多発性神経炎、進行性筋ジストロフィー、重症筋無力症
・・・上肢弛緩性・下肢痙性麻痺:前脊髄動脈症候群(頚髄レベル)

対麻痺 paraplegia:両側下肢
脊髄損傷によるものが多い
・・・痙性対麻痺:中枢神経障害
・・・弛緩性対麻痺:末梢神経障害、中枢神経障害の急性期

↑整形外科の首・腰でおこる病変を色付けしました

症状の分布で考えられる疾患(参考までに)

まとめ

主に整形外科で多い、首・腰における麻痺について勉強していこうと思い「運動麻痺」について考えました。
下肢の症状があれば腰の問題と思いがちですが、実際には首に問題があったということもあります。
年齢に伴う変形性脊椎症により、首・腰が同時に問題が起きる場合があります。
麻痺の分布や症状を知り問題を明らかにすることが大切です。
運動麻痺の症状について学習したので、次回は「運動麻痺の評価」を勉強していきます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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