セラピスト向け

運動学習を臨床で生かす(Step1:運動学習とは?、各用語の定義について)

本日は運動学習を臨床に生かすため、「①運動学習の概念を理解し、②臨床での実践に繋げていく」を目的に、「①」の内容について学んでいきたいと思います。

 

運動学習を生かす
『運動学習とは、各用語の定義』

要点のまとめ

1.運動学習とはなにか?

・運動学習とは、簡単に例えると「自転車が乗れるようになるまでの過程」のこと

2.各用語の定義

運動技術:運動課題を効率的に遂行するため「頭の中で理解した」こと

運動技能:身体活動や経験を通して「(効率的に)運動課題ができる」こと

運動学習:運動技能として取得する過程。一時的ではなく永続的。運動学習の結果はパフォーマンスとして観察できる

パフォーマンス:運動課題を遂行するときの周囲から観察可能な現象。3つの影響を受ける
※3つの影響:①運動技能(質的)、②パフォーマンスする時の環境、③個人の身体・認知特性(量的)

潜在学習:無意識で学習する方法。顕在学習:教わりながら意識して学習する方法

運動学習の段階:認知→統合→自動化の3段階

 

 

 

 

1.運動学習とはなにか?

■運動学習とは

ざっくりいうと、自転車が乗れるようになるまでの過程です


では、どんな練習方法だと「効果的に運動スキル」を獲得できるのでしょうか?まずは運動学習を解説するうえで必要な、「各用語の定義」から解説します。

 

 

 

 

 

2.各用語の定義

■運動技術(効率的方法の知識)

運動技術:

「運動課題を効果的に遂行するための、合理的かつ効率的運動の実施方法の知識

運動技術は「効率的な方法を頭の中では理解した」ということ

例:「ゴルフしたいのでのプロのスイングをテレビで見る」「松葉杖歩行を行うため治療者が実際に松葉杖歩行をみせる

 

 

 

 

■運動技能・運動スキル(効率的にできる能力)

運動技能(運動スキル):

理想的な運動技術を目標(効率化)としながら、自らの身体活動や経験を通して獲得した運動能力

※運動技能の構成要素4つ:①フォーム、②正確性、③速度、④適応性

運動スキルは「ある運動課題が(効率的に)できる」ということ

例:「自転車が乗れる」「歩行ができる」「片足立ちができる」

 

 

 

 

■運動学習(技能を取得する過程)

運動学習:

「練習・経験にもとづく一連の過程であり、(一時的変化を除外した)永続する変化

「運動学習は可視化できないが、運動学習の結果はパフォーマンスとして観察できる」

運動学習とは「運動技能(スキル)として取得する過程。一時的ではなく永続的である。運動学習の結果はパフォーマンスとして観察できる」ということ

 

【詳細】

・運動学習とは、練習あるいは経験 にもとづく一連の過程である

除外されるもの:①成長や成熟での運動行動変化、②トレーニングでの筋力向上や心肺機能向上によるパフォーマンス変化

・運動学習とは、熟練した行動を生み出す能力を比較的永続する変化である

除外されるもの:疲労、薬物、ストレスによるパフォーマンスの一時的変化

・運動学習の結果は 、パフォーマンスの変化として観察できる

 

 

 

■パフォーマンス(運動学習の結果として観察できる、3つの影響を受ける)

パフォーマンス:

「運動課題を遂行するときに、周囲からの観察可能な現象」「パフォーマンスは3つの影響を受ける」

※3つの影響:①運動技能(質的)、②パフォーマンスする時の環境、③個人の身体・認知特性(量的)

パフォーマンスは「周囲から観察可能な現象である」「①運動技能、②パフォーマンス環境、③個人の身体・認知特性の3つの影響を受ける」ということ

 

例:
①運動技能・スキル(質):
「歩くとき足の着く位置が正確になったら、歩きが速くなった」※運動技能の①フォーム、②正確性、③速度、④適応性に影響

②パフォーマンスをする環境:
「歩行を獲得しても、高低差の道や疲労などでパフォーマンスが変化する」
「マラソン大会で1位になるとお小遣いがもらえる」

③身体的特性(量):
「膝を伸ばす筋力が5㎏から15㎏になったら
歩きが速くなった」「股関節が前より10度伸びるようになったら歩きが楽になった」

 

 

 

 

■潜在学習と顕在学習(無意識・意識の学習)

潜在学習:

「学習者に対し運動手順などの運動技術を知らせずに、学習者が無意識下でその課題を反復して運動スキルを学習する方法」

 

顕在学習:

「学習者に対し運動手順などの運動技術が明確に示され、それをもとに学習者が意識下で課題を反復して運動スキルを学習する方法」

潜在学習とは「教わらずに無意識で行う 」こと、顕在学習とは「教わりながら意識下で行う」こと

 

 

 

 

■運動学習の段階(自動化するまでの3段階)

運動学習の3段階説:

「認知→統合→自動化の3段階」

■運動学習の3段階説(Fitts と Posner)

〈1段階:認知段階〉
・どのように目標と運動戦略を選択するか
・外部環境の何に注意の焦点を当てるのか
・身体部位の動かす順序などについて言語(宣言的記憶)、意識下的(顕在学習)に考えている段階

〈2段階:統合段階〉
・外部環境からの刺激と自己運動の協応
・身体部位間の協調性
・タイミングや力量調整などパラメータを学習するために運動している段階

〈3段階:自動化段階〉
・意識的な注意を配分しなくても、スキル遂行が可能な段階

運動学習の流れとして、①認知段階(教わりながら意識的に学習) →②統合段階(徐々に無意識に学習) →③自動化段階(無意識に可能)

 

 

 

 

■さいごに

運動学習を臨床で生かすため、運動学習の『概念と定義』について解説しました。

・運動学習とは運動スキル獲得までの過程であり、運動学習とは、永続的な変化です。
・学習段階は3段階で、意識下から始まり、無意識にできるようになることでした。

次回は、「運動学習理論と神経」を解説します。その後、「運動学習を高める方法」を提示していきたいと思います。

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