運動学習を生かすための方法
『注意』
要点のまとめ
・運動学習には、認知→統合→自動化の3段階があり、注意は運動学習が進むにつれて減少する
・認知段階では、二次課題により一次課題の注意が低下し→パフォーマンスが低下するが、自動化段階では低下しない
・注意には、①IF(身体内部)と②EF(身体外部)の2種類の焦点がある
・患者に運動指示を行う場合、IF指示では運動を拘束し、EF指示では自動化段階を促進する
・未習熟課題の介入においてはIF指示も有効であるため、最終的にEF指示を行う計画を立てる
1.注意について
■学習段階と注意
運動学習には3段階(認知→統合→自動化)あり、注意は運動学習が進むにつれて減少する
【運動学習の3段階説について(FittsとPosner)】
STEP1:認知段階
・どのように目標と運動戦略を選択するか
・外部環境の何に注意の焦点を当てるのか
・身体部位の動かす順序などについて言語(宣言的記憶)、意識下的(顕在学習)に考えている段階
STEP2:統合段階
・外部環境からの刺激と自己運動の協応
・身体部位間の協調性
・タイミングや力量調整などパラメータを学習するために運動している段階
STEP3:自動化段階
・意識的な注意を配分しなくても、スキル遂行が可能な段階
■注意の配分(二次課題の影響)
二次課題が、一次課題に与える影響のこと
※認知段階では二次課題により一次課題のパフォーマンス(注意能力)が低下するが、自動化段階では低下しない
-例-
【認知段階】
一次課題(ドリブル )+ 二次課題(状況判断)では、一次課題の注意が低下し、パフォーマンスも低下する場合がある
【自動化段階】
一次課題(ドリブル) + 二次課題(状況判断)では、一次課題のパフォーマンス低下は少ない
■注意の焦点①(種類)
①内的焦点(インターナルフォーカス:IF):注意を学習者の身体内部に向けること
②外的焦点(エクスターナルフォーカス:EF):注意を学習者の身体外部に向けること
■運動時(サッカー)の焦点
■注意の焦点②(運動制約)
・IF指示は運動を拘束し、EF指示は自動的な運動を促進する(Wulf G 2013)
・未成熟の場合はIF指示も有効(金山ら 2021)
■運動制約仮説(Wulf G ら 2013)
①IF指示は、注意を「動作の過程」に向けるため、自動的にコントロールされるべき運動の協調性を妨害し、結果として運動を拘束する
※しかし、未習熟課題の継続的介入においてはインターナルフォーカスも有効(金山ら 2021)
②EF指示は、注意を「動作の結果」に向けるため、自然かつ自動的な運動を促進する
■例:サッカーでボールを蹴る
IF指示:「ボールを蹴るとき、足首の角度を曲げ過ぎないで」 →身体の一部(足首)
EF指示:「ボールの中心を蹴るように」 →身体以外の部分(ボール)
■例:野球でボールを投げる
IF指示:「腕を力強く振って、球速が上がるように投げてください」 →身体の一部(腕)
EF指示:「ボールをミットに強くぶつけて、球速が上がるように投げてください」 →身体以外の部分(ミット)
運動学習を臨床で生かす方法として『注意』について解説しました。
臨床現場では、セラピストの指示は大多数が動作の過程の注意を向けるIF指示であると感じます。
しかし、自動化段階を促すためにはEF指示が必要であることを知りました。
運動学習の指導を行う際に、注意の焦点に着目し介入してみてはいかがでしょうか😊
次回は、運動学習を臨床で生かす方法の『記憶』について解説していきます。