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筋力トレーニングの基本アプローチ

本日は『筋力トレーニング』について解説したいと思います。

『筋力トレーニング』

要点のまとめ

1.筋力トレーニング

・経験や研究からなる理学療法やスポーツトレーニング関係のテキストより抜粋

・筋力発揮水準(%MVC)は繰り返し可能な回数(RM)と関係する

・ACSMテキストの筋力トレーニング指針

「成人:60-80%1RMで8-12回、2-4セット、2-3回/週」→ちょうど8-12回できるくらいの重さ

「高齢者:60-70%1RMで10-15回、1セット以上、2-3回/週」→ちょうど10-15回できるくらいの重さ
同じ筋群のトレーニングの場合は48時間以上の間隔をあけること

・等尺性収縮運動は、関節運動を行わず筋力強化ができる

・RPEでは「3 中くらい ~7 とても強い」が至適運動強度である

・今の筋力の状態により運動増強運動の方法を選ぶ必要がある

さいごに

★彡

1.筋力トレーニング

■運動の至適刺激

・至適刺激は、経験や研究から理学療法やスポーツトレーニング関係のテキストに記載されている

・運動の至適刺激は「刺激の種類」「負荷の強度」「持続時間/回数」「頻度」により規定される

ここではアメリカスポーツ医学会 American College of Sports Medicine (ACSM)第8版の運動処方を中心に筋の機能改善のための至適刺激について解説してきます

■抵抗運動の至適刺激

・抵抗運動の至適刺激には、負荷量と運動回数がある ※表1参照

・筋力トレーニングの効果を得るには、日常生活活動では経験しないような刺激を筋に与える事も重要

■表1:ACSMによる筋力トレーニングの指針(猪飼 1970より改変)

【種目】
・個々の大きな筋群を使う多関節にわたる複合運動を8-10種目含める
【負荷量・回数・セット数】
健康な成人
 強度60-80% 1RM
 回数1セット8-12回(疲労に達するまで)
 ※運動ができなくなるまでは行わない
 セット2-4セット
高齢者(一般に65歳以上)
 強度60-70% 1RM
    または主観的運動強度が5-6点
 回数1セット10-15回(疲労に達するまで)
 ※運動ができなくなるまでは行わない
 セット1セット以上
【頻度】
・2-3回/週でトレーニングをする
※同じ筋群のトレーニングは48時間以上の間隔をあけること
成人と65歳以上にてトレーニング方法が分けられています。抵抗を用いた筋力トレーニングでは、どうしても障害発生の危険が伴うのは避けられません。しかし、筋力トレーニングの効果を得るには日常生活活動で経験しない刺激を筋に与える事も重要とされます。別の記事で障害発生を考慮した「65歳以上向けのトレーニング方法」を紹介したいと思います。

■負荷量(Hettingerら)

筋力の維持:最大筋力の20-30%以上
筋力の増強:最大筋力の40-50%以上

■表2:筋発揮水準(%MVC)と繰り返し可能な運動回数(RM)の関係

筋力発揮水準(%MVC) 繰り返し可能な運動回数(RM)
100% 1回
90 3-6
80 8-10
70 12-15
60 15-20
50 20-30
30-40 50-60

■等尺性収縮運動の至適刺激

・等尺性収縮運動は、関節運動を行わず筋力強化ができる

・等尺性収縮運動の至適刺激には、運動強度による筋収縮持続時間がある ※表3参照

■表3:負荷量と持続時間(ACSMによる、運動処方の指針(南江堂 第8版)より抜粋)

運動強度
(最大筋力に対する割合) 
筋収縮持続時間(秒)
最低限度 適正範囲
40-50% 15-20 45-60
60-70% 6-10 18-30
80-90% 4-6 12-18
100% 2-3 6-10
理学療法においては、等尺性収縮運動はギプス中の筋萎縮予防などを目的に多用されます(重り・ゴムチューブを使用しても可)

■筋萎縮予防の効果がある方法

・伸長刺激(ストレッチ)
・温熱刺激(ホットパックなどの温熱療法)

意識障害や運動神経麻痺患者など筋収縮が起こせない場合に使われることがあります

■Borgによる主観的運動強度(RPE)による至適刺激

RPEを用いて「3 中くらい ~7 とても強い」が主観的な至適運動負荷強度に相当する ※表4参照

■表4:Borgと主観的運動強度の関係

category-ratio scale
  0   何も感じない
  0.5   非常に弱い(何とかわかる)
  1   とても弱い
  2   弱い(軽い)
  3   中くらい
  4   やや強い
  5   強い(重い)
  6   
  7   とても重い

  8
  9   非常に強い(ほぼ全力)
  10  (全力、限界)
何%が分かりづらい場合には、主観的な強度により運動負荷量を設定することもできます

■MMTと筋力トレーニングの関係

徒手筋力検査(MMT)の段階により、筋力トレーニングを選択する

■表5:MMTと筋力トレーニングの関係

数的スコア 質的スコア 判断基準 筋力増強運動
5 normal 最大抵抗に対して運動できる(正常) 抵抗負荷運動
4 good 強い抵抗に対して運動できる 抵抗負荷運動
3 fair 重力の抵抗に対して運動できる 自動運動
2 poor 重力の影響を除けば運動できる 自動介助運動
1 trace 筋の収縮を認めるが運動できない 介助運動(筋収縮促進)
0 zero 筋収縮なし  
重力に対して腕や足が簡単には持ち上がらない場合は、抵抗運動だけでなく自重運動や介助運動での刺激が必要となります

■さいごに

『筋力トレーニング』について解説しました。

・ACSMによる成人と65歳以上の筋力トレーニング指針を紹介しました。
・筋力トレーニングの効果を得るには、ダンベルなどの抵抗運動も必要ですが、日常生活活動では経験しないような刺激を筋に与える事も重要です。

・等尺性収縮運動による筋力強化では、ギプス固定など関節運動ができない場合に多く使用されます。
・RMや%MVCが分かりづらい場合には「重い」などの主観的な強度も参考にできます。
・現在の筋力に応じた筋力トレーニング方法を実施してみましょう。

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