セラピスト向け

赤ちゃんの発達段階から学ぶ、歩行までの関節の安定化(STEP 2:DNSアプローチを行うための評価は?)

・患者さんの歩行獲得までの状態は、赤ちゃんの成長段階と似ていて、歩行獲得までの間に、寝返り、起き上がり、お座り、四つ這いなどの様々な動作獲得を辿っていきます。
・リハビリの治療においても、痛み、関節変形、関節不安定性などによって、崩れてしまった正常な動作パターンを修正する必要があり、赤ちゃんの成長段階に沿った動作を元にした治療が展開されることが多々あります。
・また、この成長段階において『脊柱の安定化』が大事な基礎であり、DNSアプローチを行う上での評価(着眼点)となります。
・それでは、『STEP2:評価』編をみていきましょう。

  

おさらい
【DNS:Dynamic Neuromuscular Stabilization】

・DNSとは、日本語にすると、動的神経筋安定化・発達運動学的アプローチです。
・運動発達学に基づいた、『腹腔内圧の調節』『深部脊柱安定筋の活性化』による機能的安定性を基礎とした身体の運動基礎理論であるとされています。

 

STEP 2:DNSアプローチを行う上での評価

  

  

  

【DNSの診断方法】

評価は「動作安定の質」「代償の観察」「発達段階と比較」の3つ!

・評価は機能テストの組み合わせになります。

 ①動作パターンでの関節安定化のを分析する
 ②局所のみではなく全身の代償を見る
 ③現在の動作での安定化パターンと発達パターンを比較する

(例題患者)
寝返り動作での脊柱が不安定である患者を、歩行開始にむけベッド上で脊柱安定化に対するアプローチを行いたい

(アプローチおよび評価)
①3か月での仰向けで両下肢挙上位での寝返りの準備段階の獲得
②寝返りでの発達パターンを利用した回旋に伴う脊柱の関節安定化の獲得


 ※上記の状態を見るためには以下(1)~(4)の知識が必要になります

  

  

 

(1)統合された脊椎安定化機構

POINT:脊柱安定性の筋群を知り、機能障害のある筋を見極める

・脊柱を安定させる筋群は働いているか?
 ①短脊柱間筋群、
 ②深部頸部屈筋、
 ③前鋸筋、
 ④横隔膜、
 ⑤腹壁全ての筋、
 ⑥骨盤底筋群
➡深部短筋が脊柱の安定性を制御するのではなく、比較的に表層の大きな筋も脊柱の安定性に関与しています。

・フィードフォワードが機能しているか?
➡運動を行う前に自動的に活性化すること意味する。

・一つの筋が、連鎖筋群全体に関わる
➡一つの筋に機能障害があると全ての安定化機能が障害を受け、目的ある運動の質も障害を受けることになることに着目する。
➡そのため、障害部位に近い筋が原因とは限らない

 

(2)障害された安定化組織

POINT:局所だけでなく、全身の代償動作を見つけること。一時的な治療(部分的な除痛)では解決しない場合が多い

・障害された安定化組織とは、代償動作により安定化を補完しようとして起こる。
・代償動作は、①→③順で、典型的に表在筋の過負荷を引き起こすことが多い。

①関節安定化(=関節の中心化)が逸脱している
➡関節の中心化のない運動は適切なバランスの効率性に欠ける

②続いて、脊柱関節・椎間板の過負荷となっていく
➡筋の反復性損傷を引き起こす場合もある

③続いて、運動の永続的なアンバランスになる
➡一時的な治療では治りづらい状態となる

  

(3)関節の中心化の逸脱とは

POINT:関節の中心化の逸脱の評価は、全身を見て①-④を判断

【関節の中心化の条件】

①関節位置が正しい
➡拮抗筋の協調的な同時収縮により制御されている

②拮抗筋のバランスのとれた活動がある
➡中枢神経系が正常に発達した場合のみに可能となる

③回旋軸が存在する
➡運動時における『回旋の理想的な即時中心(軸)』の軌跡を確実にする
➡①-③の結果:バランスのとれた筋活動が運動中に保たれる

④全身の筋の共同運動がある
➡『単独で特定の分節』に依存せず、常に『全身の姿勢』に依存であり、

 

(4)横隔膜の重要性

・吸気時に横隔膜が収縮すると、横隔膜は腹壁に抵抗して働く
・横隔膜の共同的な反応は、腹筋群・骨盤底・腰仙椎前面の安定性を提供する腹腔圧を制御している
・胸郭と脊椎の初期位置は、共同運動を可能にするために不可欠である

例えば…
「胸郭が硬い(持続的に吸気位に置かれる場合)」 
➡胸腰椎移行部の過伸展位(胸骨、肋骨前部の位置障害)
(横隔膜の活動不全を引き起こす)
➡骨盤底、横隔膜、腹壁の協調性が不均等になる
➡代償機能として、腰部伸展筋の過活動が生じる
➡腰痛が発生する

  

その他に詳細にみるための評価がありますが、「動作安定の質」「代償の観察」「発達段階と比較」の3つを、まず実践してみましょう。

・テスト名のみ紹介します。
【成長段階に沿った詳細のテスト一覧】
➡呼吸パターン
➡横隔膜テスト
➡腹腔内圧テスト(背臥位・座位)
➡頸部屈曲テスト
➡体幹伸展テスト
➡上肢挙上テスト
➡四つ這い前方動揺テスト
➡スクワットテスト etc.

  


評価の手順は、
①患者が獲得すべき時期=成長段階の時期をリンクさせる
②リンクさせた成長段階における動作をしてみる
③動作の、安定性・代償動作の観察し、機能不全を見つける


次回『STEP3:DNSアプローチ(治療)』に進みます。 

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