セラピスト向け

変形性関節症について

本日はO脚による膝の痛みや腰痛の原因となる『変形性関節症』について調べていきたいと思います。

『変形性関節症のリハビリ』

要点のまとめ

変形関節症

・変形性関節症とは(はじめに):遺伝的要因を背景に,加齢による軟骨基質の構造的・組成的な変化,関節へのストレス,炎症による変化などの多要因が関与した疾患.

有症者:変形性関節症はリウマチ、骨粗鬆症患者と比べて骨関節疾患のなかで最も多い.

・主な症状:関節周囲の疼痛、腫脹、引っ掛かり感、違和感がある.自然経過においても徐々に進行する疾患で,外傷や関節ストレス増加により加速する.

・病態(病気の状態):病態についての関連性を図にしました.

・診断について:症状、好発部位、レントゲン所見、血液検査にて診断される.

・治療について:関節軟骨の自己治癒能力は低く、一度OAが進行すると回復は難しいため、早期受診による診断が出発点となる.関節動揺性や体重、生活習慣が原因となるため、理学療法(関節周囲の筋力強化など)や食事療法が必要である.

さいごに

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変形性関節症について

■はじめに

・変形性関節症(osteoarthritis:OA)は,①関節軟骨の変性と破壊,②関節辺縁や軟骨下骨の増殖性変化,③滑膜炎を伴う関節内の限局的な炎症などの特徴がある疾患で、最終的に不可逆的な関節変形へ進展する.

・患者数は多く,骨関節疾患のなかでは最も有病率が高い.

・OAの病態には遺伝的要因に加え,加齢による軟骨基質の構造的・組成的な変化,機械的な負荷,炎症性変化など様々な要因が複雑に関与している.
(日本内科学会雑誌 2010より抜粋)


・関節症の発症は,使いすぎや体重負荷,外傷を契機に軟骨磨耗が起こり,進行して発症する.

・必ずしも軟骨磨耗によって症状が起こるとは限らないため,症状が起こってからはじめて診断がつくことも多い.

・荷重関節である股関節や膝関節、脊椎に関節症の頻度が高い.

・重症化するとADL障害が大きいため,定期的な診断や早期治療をうけることが進行予防に大切である.
(日本整形外科学会 HPより抜粋)

以上の内容を含めて、変形性関節症について詳しく調べていこうと思います

■OAの有症者

・有症患者は膝OA 800 万人,腰椎OA 1,100 万人.関節リウマチ 70~80 万人,骨粗鬆症 600~1,000 万人と比べて多い
・膝OAの有病率は男性 42.0%,女性 61.5% 
・腰椎OAの有病率は男性 80.6%,女性 64.6% 
(日本内科学会雑誌 2010)

変形性関節症は,高齢者が要介護,要支援となる要因の上位を占めています.リウマチや骨粗鬆症と比べ軽視されがちですが同様に進行予防への対応が必要です.

■主な症状

・関節周囲の疼痛、腫脹、引っ掛かり感、違和感などがある
(日本整形外科HP「変形性関節症」より)


・関節軟骨に血管や神経がないことから症状として表に出てきにくい性質であり,症状が現れた時点でかなり病態が進行している場合が多い.

・痛みの感知は,血管や神経のある①骨膜②筋膜③滑膜関節包・線維性関節包④腱⑤骨で感じる

■症状の進行

・機械的刺激などによる関節炎に伴う疼痛と腫脹で,動かしにくさや可動域制限が生じる.

・軟骨磨耗の進行により関節炎が起こりやすくなり,荷重の繰り返しにより疼痛を感じやすくなる.

・軟骨が消失するとある程度以上の荷重刺激により疼痛を感じ,それを繰り返し,徐々に悪化.

・関節炎の繰り返しにより関節包の線維化が進行し,疼痛閾値が低下,動き始めの動かしにくさも目立つようになる.

・広範囲に軟骨が消失すると関節への負荷により疼痛を生じやすくなり,可動域制限が増悪.骨棘形成が進行すると関節拘縮を起こしやすくなる.

■痛みを感じる部位(膝関節周辺の場合)

①骨膜性疼痛:骨挫傷や骨折によって発生する

②筋膜性疼痛:筋の過負荷や損傷によって発生する

③滑膜性疼痛:関節包や線維性関節包などの関節内の炎症が波及することで発生する(膝OAで多い)

④腱性疼痛:膝蓋腱炎や鷲足炎などの付着炎として発症する(膝OA、スポーツで多い)

⑤骨性疼痛:骨折よって発生するがほとんどは骨膜性由来である(膝OAでは軟骨下骨の骨浮腫による痛みがある

半月板外縁1/3神経や血管が存在することから,引っ掛かりやインピンジメントなどの侵害刺激によって発症する.半月板中央や内縁1/3は基本的に神経や血管が存在しないため疼痛が発生しない.

※最近の知見では、損傷後の新生血管や神経伸長により無神経・無血管組織である半月板内側や軟骨への疼痛も確認されつつある.

 

■OAは自然経過において症状が進行する

外傷使い過ぎ体重負荷などをきっかけに急速に進行し、痛みも強くなる

■病態

遺伝による軟骨の脆弱性に,加齢的な変化や反復する力学的な負荷が加わることで,軟骨マトリックスの破綻,軟骨細胞の形質変化,マトリックス分解酵素の産生,滑膜の炎症が起き,軟骨の変性・破壊と軟骨下骨の変化が生じる

図式化すると…

■病態の過程

・関節表面を覆う関節軟骨は軟骨細胞と関節外の2型コラーゲンとプロテオグリカンが主成分.関節軟骨には血行や神経線維はない.

・関節症では機械的刺激などにより軟骨の変性・磨耗を生じ、また関節周囲を取り囲む滑膜の炎症が併発して変性が加速する.

・同時に関節周囲の骨軟骨形成などの増殖性変化を伴い進行する.

・それら変化で血管増生や神経線維の増生をともなう関節包の線維化が起こり痛みが感じやすくなる.

・様々な炎症性疾患(リウマチなど)、軟骨脆弱性の素因(遺伝・加齢など)、外傷、関節形成不全、関節動揺性が関節症発症の原因となり悪化の誘因となる.

・関節への負荷により軟骨磨耗から骨組織の破壊が生じると関節は変形し、変形と症状の悪化の悪循環を起こす.

■診断

・第一に症状と年齢,病歴より,最も頻度が高い関節症を疑う.

・X線(レントゲン)写真による骨棘形成、関節裂隙の狭小化,軟骨下骨の硬化,関節裂隙の消失などで診断される.

・特に多発性病変が存在する例では,血液検査で炎症反応やリウマチ性病変の存在を否定し,必要なら関節液を補助診断として用いる.

関節リウマチと変形性関節症の鑑別する表を添付します

■予防と治療

・重症化するとADL障害が大きく、時に手術的加療が必要になる関節では、定期的な診断を受けることが進行予防に不可欠である.早期の整形外科への受診が予防や治療の出発点となる.

・関節軟骨の自己修復機能は低く,一度OAが進行すると回復は難しい.また治療法として、軟骨磨耗の防止に効果的な治療法は確立されていない.そのため,より軽傷な段階で検出して,発症の進行を予防する必要がある.

・関節症の悪化の防止には適度な運動負荷肥満の改善労働量の調節関節炎のコントロールが有効とされる.

機能的な治療としては関節周囲の柔軟性の維持と周囲筋力の維持が重要である.

■OAの治療(症状の進行予防)

OAでは食事療法や運動による体重減少など生活習慣指導や筋力強化や関節可動域維持の理学療法といった非薬物療法が重要になっています.

 

■膝OAには早期判断基準がある

※詳しくは変形性膝関節症で解説します

■さいごに

・今回は「変形性関節症」について調べていきました。

・変形性関節症は、骨関連の疾患として最も多い疾患でした。

・関節表面の軟骨には痛みを感じる血管や神経がなく基本的に痛みを感じないため、痛みがでて診断されるときには病態が進行している場合が多くあることを知りました。早期の受診・診断が、OAの予防や治療の出発点となる重要性を知りました。

・これから長生きする時代となり、長く健康な生活を送るためにもOA治療に関する知識が必要です。

・OAは「脊椎」「膝」「股関節」に多いため、それぞれの特徴にあった治療方法を提供できるように具体的な方法について調べていきたいと思います。

・最後まで読んで頂きありがとうございました。

■関連リンク

①脊椎症脊椎症(基礎知識、特異的評価、保存療法の効果、具体的方法)
②変形性膝関節症(基本的な考え方、特異的評価、保存療法の効果、具体的方法)
③変形性股関節症(基本的な考え方、特異的評価、保存療法の効果、具体的方法)
④脊椎OAの手術について(手術の基本的知識、具体的な術後理学療法の期待される効果エビデンス、予防の運動指導)
⑤膝OAの手術について(手術の基本的知識、具体的な術後理学療法の期待される効果エビデンス、予防の運動指導)
⑥股OAの手術について(手術の基本的知識、具体的な術後理学療法の期待される効果エビデンス、予防の運動指導)

 

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